2020年8月30日日曜日

Covid-19に遭遇したシエラレオネ


“ともに歩む会”本部では総会の準備と会報29号の編集に追われています。会報29号には、アドリアナ地区長などからの年度報告が掲載されますが、下記の報告は、年度報告に沿えて送ってくださったものです。筆者のマイテさんはアドリアナ地区長の知人で、シエラレオネで共に活動したことのあるスペイン人です。今は、シエラレオネの窮状をヨーロッパの人々に知らせる民間ジャーナリストとして活躍しています。会報にはスペースが取れませんので、会報よりも一足先にこちらで紹介させていただきます。        

                   Covid-19に遭遇したシエラレオネ    

新しい日常は以前と変わらず、空腹感だけが増しています。

                                              マイテ・カタラ(Maite Catala)

 

   私たちの多くは、このパンデミックの時代に資源の少ない国々がどのようにして生き延びているのかを模索しようと試みますが、最大限に想像力を発揮してみても、ウイルスの幻影が何百万人もの人々の生活にどれほど大きな影響を与えているのかを想像することはできません。

  宣教クララ修道会のシエラレオネ地区長であり、看護師という職業に就いているSr.アドリアナ・フアレスさんは、いくつかのヒントを与えてくれました。見通しは決して楽観的なものではありません。勇敢な彼女たちは1960年代にこの国に到着して以来、宣教活動に加えて教育や保健分野に貢献してきました。武力紛争の最中でも、人々の苦しみを目の当たりにして来ました。 その後のエボラウイルスの影響で、シエラレオネや近隣諸国のリベリア、ギニアで11,000人以上の死者を出した際にも、宣教クララ会のシスター方は、多くの国際的な援助機関とは異なり、ウイルスに感染した人々に素晴らしい援助を直に提供して来ました。 しかし、人々は伝染病を防ぐために大切な方法を学んでも、彼らはCOVID-19がもたらすものにそれを生かすことができません。アドリアナ地区長は、"他の場所と同じようにウイルスがこの国の人々を襲ったら、それは壊滅的なものになるだろう "と言っています。

  この発言の裏には、10人以上もの家族が所狭しと同じ皿で食事をし、わずかな距離も置かず同じ部屋で一緒に寝る家庭生活の状況があります。

怪物COVID-19のもたらす脅威

いよいよ姿を現し始めた怪物COVID-19は、脅威へと変貌し、多くの人々の生活や生存に深刻な影響を与えています。 乏しい農業生産物は、地区外への流通が禁止されているため現地だけで販売されており、日常食の輸入食品は十分ではなく、手の届かない価格で販売されています。ブラジルなどの国から輸入され、地元の食の基本となっている米は、3月末から現在までに2倍の価格になっています。政府が漁業者の活動を制限しているため、漁業部門も深刻な影響を受けており、市場では魚が不足しています。 また、抗マラリア薬や、検出するための検査薬など、必要な医薬品も不足しています。コロナウイルス検査はできず、期待もできません。 この深刻な厳しい状況は決して今に始まったものではありません。新しい日常は旧来のものと非常に似ていますが、さらに激しい空腹感が加わっています。

外出禁止令

国内の教育センターなどで学ぶ若者は、旧態依然たる問題に直面しています。彼らは学校に通うことができなくなってから、ある者は縄跳びする年齢で妊娠しており、それらのすべては、食物を入手する方法が断たれた事に加えて、学校で取っていた毎日の昼食を失ったために、体重を減らしています。外出禁止令によって、性的・労働的虐待を受けたり、家事や家族全員の世話を任されたりすることもあります。まさにエボラの時と同じです。 クララ会のシスターが言及しているように、フリータウンの通りには、売れるものなら何でも売っている10代の若者があちこちにうろついているのが見られます。彼らはウイルスの時代の脆弱性をはっきりと映し出しています。

  文科省がラジオ教室を放送しており、この番組は歓迎されているものの、多くの国民は家庭の電気が不足しており、電力不足を補うための電池にお金をかける余裕はありません。学校が閉鎖され、特別試験対策授業(初等部から中等部への合格と大学への進学)を受ける者以外は、シスターたちは少女たちが1年を無駄にしないように想像力を働かせ、自分たちで教材を準備し、離れたところから毎日宿題の添削をしています。彼女たちは、女の子が学校に行けないことで失うものは、学力の低下よりもはるかに大きいことを知っています。

弱い立場の家族

一方で、何百人ものシエラレオネ人が彼らに配給される食料手当に頼っています。他の組織と同様に、クララ会のシスター方は人々のニーズに適応しなければならないことを知っており、可能な限り、最も弱い立場にある家族に基本的な食材を詰めた小包を届け、孤立が食糧供給の障害にならないように、最も人里離れた村にも躊躇なく移動しています。

  ここでの問題は資金調達です。欧州は自国の問題解決に注力しているため、私たちも深刻な状況を公表する努力をしてはいるのですが、徐々に得られつつある資金でも、最も被害を受けた家族を支援するには全く足りていません。

  この記事は、彼らの現実を示し、連帯と彼らの祈りへの答えを求めてヨーロッパの国々の人の耳を傾けてもらうための窓です。                   (訳:吉原千晶)