シエラレオネ支援の手伝いをしながら、いつも気になるのは東日本大震災の復興支援のことです。私の郷里は福島県福島市で、今でも兄や姉の家族がそこで生活しています。避難区域などではありませんが、様々な形で原発事故の影響をまともに受けながら頑張っています。震災後、福島に行くことはあっても、被災地まで足を伸ばして津波被害の実情などを見ることはできませんでした。何も手伝いができない者が人様の不幸を見に行くようで、申し訳なく思い、近寄れませんでした。
しかし、一昨年の秋、教会の研修会に参加して福島県いわき市の津波被災地を見学し、地元の方から当時の様子を沢山の写真を用いながら説明していただく機会に恵まれました。テレビでは何度も見てきた筈ですが、やはり現場で見なければ本当の恐ろしさは分からないものだと思いました。ガイドの方は「自分が実際に見て体験したことの3割も話せない。」とその胸の内の辛さを語っておられました。私たちが見聞きしたことは、津波被害の極一部分であり、本当に知るためには、今でも必要とされている復興ボランティア活動などに参加することが不可欠だと思いつつ、何もできずにおります。
日本の震災の話を聞き、祈る子どもたち
今回、縁あって愛知ボランティアセンター理事長の久田光政氏に出会うことができました。高校の教師をされながら、今でも精力的に被災地でのボランティア活動に取り組んでおられる様子をお聞きして、大きな刺激をいただきました。その久田氏が、愛知県内の私立中・高校生の非常食を卒業時に寄付してもらい、シエラレオネに送る活動を発案され、今その準備を進めておられます。OLG校が現地の窓口です。期待し、感謝しています。
さて、この3・11大震災は、私に取りましてとても大きな転機になりました。前年の9月、思いもかけず「手を貸す運動」の代表を命じられ、支援金の受け入れや送金などの仕事にも少しずつ慣れてきた時でした。地震発生の2日後、シスターエリサ地区長から「3月に送っていただく予定の支援金送金はストップして欲しい。それを被災地への義捐金として欲しい」との連絡をいただきました。これをどう受け止めるべきか悩みましたが、委員の方々と相談し、結論としては、シスターエリサ地区長の申し出を受け入れ、送金予定の支援金、200万円を日本赤十字社に送りました。
更に、シスター根岸からは、OLG校の先生方や児童・生徒たちがお金を出し合って義捐金を集めてくれたと言って、当時シエラレオネで奉仕されていた医師の川嶋先生に託して5万円を届けてくれました。シエラレオネの人々にとって、5万円という金額はとても大きいもので、ある子は家のニワトリを売り、またある子は川に行って採った魚を売ったりして得たお金を寄付してくれたと聞いています。給食も、この月は雑穀米等でなんとかしのいだと後で聞きました。
「自分たちがいつも苦しい思いをしているので、今苦しい状況にある日本の被災者の気持が良く分かるのでしょう」とシスター根岸から聞きました。「ともに歩む会」の原点がここにあったように思います。
被災地の中にはかなりの数の支援者がおられましたから、その方々の安否を確認したり、支援者の皆様に上記の事実を知らせるためのニュースレターを早急に発行したりという作業に追われる日々を過ごしました。そして、ご自分が被災者でありながらなお、シエラレオネのためにと支援金を届けてくださる方々のご愛に触れました。今、思い返してみると、それらの出来事を通して、代表としての覚悟のようなものが私の中に生まれたように思われます。
そして、200万円の支援金を震災義捐金にすることを即座に決断されたシスターエリサ地区長の信仰に、今、改めて感動させられています。
2月24日の新聞では、日本政府は一度決めたシエラレオネへの自衛隊派遣の見送りを決めたと報じていました。それ以前に安部首相が「エボラ出血熱対策に思い切った支援をします。」と世界に向けて演説するのを何度かテレビで聞きました。きっと多額の支援金を送ったのだと思いますが、具体的にどんな支援をしたのかはほとんど報道されていないように思います。お金を出しただけの支援だと、それはほとんど国民の手には届いていないのではないかと心配されます。政府が自衛隊のシエラレオネ派遣を見送った理由の一つに「官邸や自衛隊の内から、隊員の感染リスクがある中で何故行くのか」との声があったとも記されていました。
感染リスクの真っただ中で、何物をも恐れず、貧困家庭への食糧配布活動を続けられたシスター方の働きを思うと、涙が出る思いがします。
シスター吉田やシスター白幡は日の丸を胸につけて食糧支援活動を行っている訳ではありませんが、日本とシエラレオネの人々の真の架け橋になってくださっていることは確かなことだと思います。
東日本の被災地にも、多くの外国人が支援にかけつけてくれたニュースも見ました。私ども「ともに歩む会」は、日本の被災者の皆様の更なる復興を心から祈りながら、シエラレオネ支援に専念させていただきたいと思います。そして、被災地の真の復興のために、お金だけでなく、本当に人々の痛みに応える支援が政府によって一層強力に行われることを願わずにはおられません。
シエラレオネの子ども達は、今も日本の被災地の人々のために祈り続けてくれています。
(菅野勝治郎)