2014年7月19日土曜日

Nさんの遭難死

別掲の会報4号の最後に「訃報」が掲載されています。山菜を採りに出かけて川に流され、行方不明になっていたNさんのご遺体が発見されたとの知らせが届いたのは、会報編集の最終日でした。
会報にはそのことを簡単に掲載しましたが、Nさんの奥様は富山県魚津市で「シエラレオネの子どもを助ける会・富山」を主宰し、手を貸す運動の時代から熱心に支援活動を続けておられます。6年程前、当時の手を貸す運動・佐藤正明代表と一緒にシエラレオネを訪問した時のメンバーの一人で、その訪問に同行した私ども夫婦は、それ以来Nさんの奥様と親しくしておりました。
葬儀に参列した家内が次のような話を聞いて来ました。
Nさんが遭難されたのは6月7日ですが、翌8日にはシエラレオネ支援のためのフリーマーケットを開くことになっていたそうです。7日の朝、早朝の仕事に出かける奥様にNさんは庭先に咲いていた花をとって手渡されたとのこと。いつもは妻を見送った後、自宅介護のお母様に時間をかけて朝ごはんを食べさせるのが日課だったそうですが、この日は、ショートステイ中だったため、早い時刻に山に向かわれたようでした。
Nさんご夫妻はよく二人で山登りされたようですが、この日は友人との山行きで、奥様には今回の登山の目的を告げず、いつもより多めの荷物を用意しておられたそうです。後になってわかったことですが、Nさんのこの日の目的は、フリーマーケットに出すための大量の山菜採りだったとのことです。
山岳仲間や昔の職場仲間などによる懸命の捜索活動が続けられ、遭難から丁度1週間後に現場からそれほど下流ではない雪渓の中から発見されたとのことでした。
書道家としても大きな働きをされたNさんですが、奥様のシエラレオネ支援活動をいつも陰から支え続けておられました。また奥様もシエラレオネ訪問後は、現地で接した子ども達の明るい笑顔と、その背後にある貧しい現実とをいつも心に留めて「私たち数名の力では大きなことはできないけれど、やれるだけの支援活動を続けていきたい」といつも話しておられました。Nさんが亡くなられた今、いつも一緒に寝ていた愛犬チャロは、Nさんのご遺影の前で寝ているとのこと。奥様は、「チャロがいるから生きていける」と悲しみをこらえながら電話で話しておられました。
私は、シエラレオネ訪問に出発する日、成田まで見送りに来られたNさんにお会いしました。多くを語る方ではありませんでしたが、その優しい姿が思い出されます。

毎年のように、支援者やそのご家族の訃報が入りますが、それぞれに素晴らしい人生を歩まれ、Nさんのようにアフリカの子ども達に熱い心を寄せておられたに違いありません。そのご好意を忘れないようにしたいと思い、拙文を記させていただきました。
             ともに歩む会代表 菅野勝治郎



会報4号で紹介したガラス製の一輪挿しとお菓子皿

2014年7月13日日曜日

シエラレオネのエボラ出血熱

会報の4号に、シスター白幡が「エボラ出血熱」について簡単に報告を書いてくださっています。そこには、一部の人々が厳しく注意するので、ルンサの人々は、普段は貴重な食料にしている小動物も食べないようにしている様子が書いてありました。
その後、日本のテレビ番組などでも西アフリカでのエボラ出血熱の流行について大きく報じており、心配の声が本部にも届いています。
 エボラ出血熱というのは、比較的新しい感染性の病気で、空気伝染はないのでそれほど伝染力は強くないようですが、感染するとかなりの高い確率で死に至る恐ろしい病気だそうです。
 シスター吉田に最新の状況を知らせていただきました。一時はエボラ・エボラでかなりパニック状態でしたが、最近は沈静化し、落ち着いて来ているそうです。シエラレオネのエボラ出血熱が流行しているのはシエラレオネの東部のカイラフン(Kairahon)という町で、ここには宣教クララ修道会の修練院があり、シスター吉田も5月末にエボラがニュースになる3日前までここの修練院に出張していたそうです。そして、エリサ地区長も6月末に、この修練院を訪れ、様子を見てきたそうです。その結果、特別の対策を取る必要はないとのことで、修練院の修練女たちは引き上げることはせず、引き続き普通の生活をしているそうです。でも、カイラフンから他の地区に出る時は、チェックポイントで検査を受けることが義務付けられたそうです。

  カイラフンを訪れたSr.エリサ地区長(右の人・数年前の写真)

 OLGのあるルンサはカイラフンからは遠く離れていますから、ほとんど心配ありません。
 シスター吉田が病院修道会のブラザーに聞いた話では、シエラレオネでは178名が発症し、74名死亡、24名が完治したそうです。
 ちなみに、WHOが7月6日に発表した統計では、西アフリカ3カ国(ギニア、シエラレオネ、リベリア)でのエボラ出血熱の感染者は844名で、そのうち死者は518名だそうです。
 感染源は動物ですが、人から人への感染した例も見つかっているそうです。西アフリカでは死者の体を水で洗って葬る風習があるので、その時に感染するのではないかとの疑いもあるそうです。
 シスター吉田からは、「ご心配いただいてありがとう。しかし、この町には感染者は皆無で、OLGの子どもや家族には心配がないのでご安心ください。」とのことでした。

 日本でしたら、まず、手洗いやうがいの徹底が叫ばれますが、清潔な水を手に入れるのが難しい国ですので、このまま沈静化することを切に祈っていきたいと思います。
[訂正]上記の記事について、西アフリカの医療事情に詳しい藤井千江美様から、次のようなアドバイスをいただきました。
感染源は動物ですが、人から人への感染した例も見つかっているそうです。」と書きましたが、現在ではそれよりも一歩深刻になり、人から人への感染が広がっている事実を把握して、終息に向けての懸命の活動が行われているとのことでした。藤井様に感謝し、皆様にお詫びして訂正させていただきます。
           ともに歩む会 代表 菅野勝治郎